挑戦!奥穂高

長いようで短い夏休みが終わりました。いや~今年の夏休みは遊びました。海にいったり山にいったり…9日間のうち、家で寝たのはなんと1日だけ!(笑)今日はそんな夏休みの1コマ、奥穂高岳の登山日記を綴ります。

きっかけは最近山登りを始めた人とどこか行こうと言う話になったところから。私も山は中学の時に祖父に連れられて白馬岳に登ったのが最後で、いつかまたどこかに登ってみたいと思っていたので、とても楽しみでした。そんな中決めた山は北アルプスの奥穂高岳。富士山・北岳に次ぐ日本で3番目に高い山です。

北アルプスはいわゆる上級者向けの山ばかりで、普通は山の麓で前泊、山小屋で一泊と言うように数日を掛けて日程を組みます。ところが2日間という限られた中で他にも行きたいところがあった私たちは、日帰りという究極の日程を組んでいました。(笑)しかも金曜日仕事が終わってそのまま車を運転して現地へ、徹夜のまま早朝登山開始というハードスケジュール。今思えばどこの頭がそんなこと思いついたんだとため息がでるばかりです。

仕事が終わってすぐに買い物に行き、飲み物やら食べ物やらを調達。ついでに冷蔵庫にあった余り物で焼きそばを作ってパックに詰めてみたり…。少しでも寝ておけばいいものを、気分は小学生の遠足前夜でしたね。(笑)

結局焼きそばは現地へ着く前に食べてしまったというオチ付きでしたが、約6時間のドライブの末、朝4時頃新穂高温泉へ到着しました。着替えなど準備をして、出発したのは5時頃。辺りは既に明るくなり始めていました。

ちなみに私は酷い軽装。ハイキングに来たかのような格好です。(笑)と言うのも引っ越しの時に持っていたもの全て捨ててしまったので、あり合わせのもので来ていたからです。辺りを見回してもこんな格好の人は居ませんでした。みんな本格装備で軽くビビりました。ピッケルやらヘルメットやら…。相方はそれなりの格好で来ていて、本格的に自分だけ浮いている感じ。(でも相方の黄色いパンツも本格的に云々…笑)

徹夜の私は今が何時なのか感覚が完全に狂っていましたが、朝6時を過ぎると辺りは完全に明るくなってきて朝がやってきたと分かりました。登り始めの標高は1200mくらいしかなかったので、草木の生い茂る割と歩きやすい道でした。ただちょっと小雨がぱらついていて、石や木の根っこは滑りやすくなっていました。

ひたすら歩くこと5時間くらいでしょうか。辺りはかなり岩だらけの道(ガレ場)になり、傾斜も厳しくなり、登るのが大分苦しくなって来ました。途中空腹を満たすため、持ってきたおにぎりを食べようと水の殆ど流れていない沢の上で休憩を取ったのですが、あろうことか食料を全て車の中に忘れてきたことに気がついた私…。死んだと思いました。(笑)ところが相方が自分はあんまり食べないからと半分分けてくれたので、とりあえずその場は何とか凌ぎました。一人じゃなくて良かった…。しかしおにぎり2個とスニッカーズ2本で朝昼夜の2人分の食料とは、家でぐうたら生活していても足りないくらいの量なので本当に気が気でなりませんでした。準備はちゃんとしないといけませんね!

先ほどの写真と比べても、辺りの風景が一変しているのが分かると思います。まだまだ山頂は上なのに、ずっとこんな道です。(笑)石によっては不安定ですぐに崩れ、滑石を引き起こす事もあり非常に危険でした。二人で登っていても、先導している人の足下の石が滑り出し、下の人に直撃しそうになった事も幾度かありました。上級者向けの山に来たという感じがぷんぷんします。

上を見ればもうすぐこのガレ場も終わるんだ!と思ってしまいそうな風景に見えるのですが、実は霧で見えなかったり、カーブしているだけだったりで、ガレ場は永遠と続いていました。正直「またか~」と声に出して呟いたくらいです。足場は悪いし、傾斜が急だし、寝不足で心臓は上がりっぱなし(笑)だし、休憩の回数もかなり頻繁にとるようになりました。

そしてとうとうこの登山で最大のミスを犯すことになります。人通りが多く整備されている登山道ではあり得ませんが、上級者向けで且つ見通しの悪いこういった山道では、コースを見失ってしまうことがあるのです。ケータイのGPSを使ったりもしましたが、地図によっても道が曖昧で、結果違う沢を登ってしまったのです。今までも険しかったけれど、この沢は特に険しい。そう思いながらも、方角的にはあっていたのでほぼ一番上まで登ってしまい、その先の道が無いことに気がつき唖然としました。『この岩場をまた降りるのか!』かれこれ1時間以上登ってきた岩場だったので、その分ショックも大きいです。時間もないのに!ちなみにこんな感じの岩場でした。

完全にロッククライミングですね。(笑)どうして間違えたことに気がつかなかったのか!それまでに鎖を使って岩場を登ったり、ハシゴで崖を登ったりもしていたので、こんな場所もあるのか、と思っていた自分がいたのかもしれません。呑気に動画を撮っていますが、実はこの後自分が登ろうとしたとき、両手で捕まっていた大きな岩が急に滑り出し、危うくそのまま潰されそうになるというハプニングもありました。危機一髪で違う岩に捕まったので流されずに済みましたが、高所の崖から落っこちる感覚はもう二度と味わいたくありません。本当に怖いです。

その後気を取り直して正しい道を探し、再び前進しました。こういう山奥では、赤や白のペンキで岩に印がついていたり、ハチマキの様な布が木に結びつけられていたりと、道しるべはあるものの標識なんかに比べると非常に分かりづらくなっています。その道しるべが見当たらなくなったら道を間違えたと言うことになるのですが、その道しるべも何百メートルおきにあるかなどの決まりもなく、今回の様にまだ現れないだけだと思い込んで進んでしまうことも少なくありません。時間には余裕を持ったスケジュールを組むのが大切ですね。(全く人の事言えませんw)

そして正午頃、ホッとしたのもつかの間、この登山に歯止めを掛けてしまう衝撃の事実に見舞われます。GPS情報によるともうすぐ山頂と言うところで、夏だと言うのに雪渓が現れたのです。しかも30°以上はあったと思われる非常に急勾配な場所でです。後ろを振り返るのも怖いくらい。

滑石注意です!しかし見ての通り本当に人が居ません。単純に天候が悪かったからなのでしょうが、ここまで居ないと道をまた間違えたかと勘ぐってしまいます。雪渓では普通足にアイゼンというトゲのようなものを付けないとまともに歩けません。試しに一歩踏み入れて見ましたが、滑ってしまって1歩すら進めませんでした。アイゼンは用意しようか迷っていたので、なんとも厳しい決断ミスだった様です。

そんなことをやっていたら天気はますます悪くなり、辺りは一面濃霧に…。正直前の人が見えないくらい濃い濃霧です。

下から見ると100メートルもない小さな雪渓(実際はあるかもしれません)なのに、それだけの為に山頂へ行けない。今まで7時間以上険しい道のりを歩いてきたのに、こんなところで…。悔しい気持ちで一杯でした。でも実はもうその時自分の足はガタガタで、10メートル進むと歩けなくなってしまうくらいになっていました。二人で少し休憩した後、結局来た道を戻ることに決めました。今思い出しても本当に悔しい!あの綺麗な尾根道を歩きたかった…。苦渋の決断です。

帰りは雨が強くなり、雨合羽を持ってきてはいたものの全身びしょ濡れでした。ただ登りとは違って20分ぐらいは続けて歩くことが出来たので、時間を掛けて下山しました。いやしかし本当に長い道のりでした。山って、帰りの道が長いんです。本当に長い。小さい時にも経験した、懐かしい感覚に浸りました。

完全に夜になっていましたが、無事に下山し、新穂高温泉の宿で温泉につかってそのまま爆睡しました。あんなに食糧不足で空腹だったのに、疲れすぎていたのか夕飯を食べた記憶がありません。(笑)


翌日、この日は黒部ダムを見に行く予定になっていました。前日とは打って変わって良い天気。奥穂高に上れなかった悔しい思いを噛みしめながらも、時間的にもう間に合わなかったので、穂高を後に、車を走らせました。

写真では伝えきれませんが、北アルプスの山並みは本当に険しく、そして美があります。次は絶対登り切ってやる、二人でそう約束しました。

さて、黒部ダムには扇沢という所からトロリーバスに乗って向かいました。トロリーバスはこの黒部でしか乗ることの出来ない、電気で走るバスです。架線があってをそこから電気を取り込み、モーターで走る電車に非常に近い乗り物です。どうしてバスなのかはよく分かりません。ユニークな乗り物を作りたかったのでしょうか。…そう言えば全身筋肉痛で階段を上り下りするのにえらい時間がかかりました。(笑)

トロリーバスを降りてひんやりとするトンネルを抜けると、巨大なダムの姿が見えました!

これが黒部ダム!絶賛放水中です。M字に曲がったアーチが綺麗ですね~。そしてダムの上に人が居るのですが、米粒のようです。いかにダムが大きいかが分かりますね。

こちらは展望台から見た黒部ダムです。

実は高いところが苦手なのでかなり足がブルブルしていたのですが、どうしても来てみたかった黒部だったので、頑張って撮りました。(笑)

太陽が出ていたので、綺麗な虹も出ていました。

先ほど人がいたダムの上から見ると、こんな感じです。谷の方から風が舞い込んできて、水しぶきが上まで飛んできます。ちなみによく見ると中心部にも小さな虹の輪っかがあって、全部で2本の虹が出ています。

前日行った穂高はとても素晴らしかったですが、黒部も綺麗な所でした。乗り物で気軽に行けるところが良いですね。富山県側の黒部峡谷もどんなところなのかいつか行ってみたいところです。

その後黒部を後にし、ふらふらしながら夜には帰還しました。とっても長い二日間でした。穂高はいつか絶対、登ります!ジャンダルムで写真を撮ると決めました!(*´Д`*)